あなたには、忘れられない一杯はありますか?
それは、レストランで飲んだ赤ワインだったかもしれないし、おばあちゃんが淹れてくれた煎茶だったかもしれない。
でも、全く同じものを自分の家で飲んだ時、何かが違うと感じたことはありませんか?
この経験からもわかるように、ワインやお茶の品質だけが美味しさを決める要素ではないということです。レストランのソムリエやおばあちゃんがどうやったら一番美味しく飲めるか工夫したことで、印象に残る一杯になったのです。
台湾茶の場合も、最高に美味しくするには良い水と良質の茶葉は必要不可欠ですが、これ以外にも隠された工夫が美味しさの鍵を握っています。
その一つが『温度』です。
台湾茶は高温で淹れることが重要です。細かいことを言えば茶葉の種類や製茶方法によって温度を微妙に調節しますが、台湾茶の命とも言える香りを最大限に引き出すには高い温度が必要だからです。
実際100℃に沸騰しているお湯を使っても、使う急須やカップが冷たいと温度を吸収してしまい、急須の中の温度は10℃以上低くなってしまいます。
それを防ぐために、茶器を温めることによってお湯を高温に保ったまま淹れることができ、硬く揉まれた茶葉でも短時間でしっかり開き、台湾茶特有の香りが開放されます。
台湾では熱湯を急須の上から注ぐ光景をよく見かけますが、これは一番温まりにくい急須の上部を温め、急須の中の温度をすばやく上げる技です。実用的な方法ですが、専用の茶器が必要ですし、火傷をする可能性も高くなるので、ここでは簡単に高温にする方法を紹介します。
まず、お茶を淹れる前にシュンシュンに沸騰した熱湯を茶器に注ぎ、蓋がある茶器の場合は閉めます。温まっているか見極めるポイントは、急須の場合は蓋を、蓋のないカップの場合はお湯が入っていない上部を触ります。さっと触って熱いと感じたら茶器は十分温まっています。
もうひとつ忘れてはいけないのは、急須を使う場合、お茶を飲む湯呑みも温めておくことです。
次にお湯を捨て、すぐに茶葉やティーバッグを入れ、再び熱湯を注ぎます。温度を高く保つために一連の動作を手早くすることがポイントです。
「自分で淹れたら何かイマイチだな」「台湾で飲んだ時より香りが弱いなあ」と感じていたら、茶器をしっかり温めて台湾茶を淹れてみてください。
きっと、湯気とともに立ち上る香りに癒され、最高の一杯になるはずです。