自然と温かい飲み物が欲しくなる季節になりました。
赤や黄の落ち葉が地面を飾り、朝晩は冷え込み、すっかり秋を感じます。
今回は、そんな哀愁漂う秋にぴったりの台湾茶『蜜香貴妃』をご紹介したいと思います。
その名の通り、ハチミツが入っているかのような甘い香りが特徴で、その衝撃的な香りに魅了される人は後を絶たず・・・欧米ではHoney Oolong(ハニーウーロン茶)とも呼ばれるほど。
甘さだけではなく、ほんのり感じる酸味と苦味が奥行のある味わいを演出し、ずっと飲んでいても飽きが来ないのが特徴です。
そのまま飲んでも十分満足感がありますが、スイーツに合わせても良し、食中茶としても良し、お酒と混ぜてカクテルにしても絶品と、オールマイティーなのも魅力です。
そして台湾茶には珍しい琥珀色の茶湯は、まるで赤とんぼが舞う夕暮れを思わせる綺麗な秋色。甘い香りに包まれながら美しい茶湯を眺めているだけで、ほっと心がほどけます。さらに発酵度と焙煎度が比較的高いため、飲めば身体の芯からじわじわ温めてくれるので、肌寒いこの季節におすすめです。
また、蜜香貴妃が特別なのはその製茶方法にあります。
台湾茶のクオリティーシーズンは春と冬とされている中、蜜香貴妃は初夏にしか作れません。なぜなら、この時期に現れる小さな虫「ウンカ」の力が必要だからです。ウンカが茶葉のエキスを吸うことで茶葉の発酵が始まり、他にはないこの甘い香りを放ちます。
そして茶農家は噛まれて黄色くなった部分だけを手で摘んでいく、気の遠くなる作業を続けます。さらに収穫前の一週間、雨が降ると香りは飛んでしまうので、雨が降らないよう、ただ祈るのみ・・・
ウンカが高山の茶畑に飛来しない、雨ばかりの日が続く、そんな年は蜜香貴妃は作れないのです。茶農家の情熱と自然の力が生んだ、まさに奇跡のお茶と言われる理由はここにあるのでしょう。
では最後に蜜香貴妃をおいしく入れるコツをお伝えします。
台湾茶の香りと味を左右するお水以外で気を付けることは、一般的な台湾茶を淹れる100℃よりも少し低い温度、95℃で淹れることです。100℃で淹れる台湾茶の場合、温度が下がらないように急須を十二分に温めて使いますが、蜜香貴妃の場合は急須にお湯を注ぎすぐに捨て、さっと温める程度にすると、温度が上がり過ぎず、甘さが引き立つおいしい蜜香貴妃になります。